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国会が9月8日、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に関する閉会中審査を開いた。
処理水放出の安全は科学的に確かめられている。だが中国政府は「核汚染水」というレッテルを貼り、世界に対して日本の非を鳴らしている。安全な日本産水産物の輸入は禁止した。いずれも不当で風評被害を拡大している。容認できない。
日本の政党と国会議員に最も求められる役割は、誤った風評をまきちらす国や勢力をはっきりと批判し、彼らの反日的なプロパガンダを撤回させるべく言論で対抗することだ。
だが、その負託に応えない政党、議員が存在している。極めて残念だ。
閉会中審査で、各党議員が水産業者への支援を訴えたのは妥当だ。問題はその先である。
自民党は「中国の暴挙に政府は強い姿勢で臨むべきだ」と訴え、中国の不当な禁輸について世界貿易機関(WTO)への提訴を求めた。日本維新の会も同様の立場を示した。公明党も「科学的根拠に基づかない、自らの正当性のみを主張している」と中国を批判した。
憂慮すべきは立憲民主党や共産党の態度だ。
閉会中審査で立民の長妻昭政調会長は、中国の禁輸を撤回させるよう日本政府に求めた。
それはよいとしても、立民は誤った風評を拡散させている党所属議員の言動に厳しく対処していないという深刻な問題を抱えたままである。
同党の石垣のり子参院議員は処理水を「汚染水」と呼び放出中止を求めた。7月には阿部知子衆院議員ら複数の立民議員が、韓国の野党とともに放出反対の共同声明を出した。れいわ新選組や社民党の議員も名を連ねた。
福島を傷つける風評を広げる所属議員を厳しく処分、指導しない政党は無責任だ。立民は党を挙げて海洋放出の安全性を内外で説いたらどうか。
共産は論外だ。同党の志位和夫委員長は8月に「汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を強行すれば、福島の復興に重大な障害となる」とする談話を発表し、閉会中審査でも放出中止を重ねて要求した。中国政府の不当な主張とそっくりだ。
政党と国会議員には国民と国益を守る責務があることを忘れてもらっては困る。
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2023年9月10日付産経新聞【主張】を転載しています